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2018年4月20日 更新

「この作品で新しい自分を生み出すんだ」強い想いをもって紡ぎ出した初のセルフ・プロデュース作品。森 恵『1985』ロングインタビュー

2018年4月25日(水)にオリジナル作品としては実に4年ぶりとなるフル・アルバム『1985』を発表するシンガーソングライター森 恵。もともと歌唱力とギタープレイに定評のある彼女が満を持して初のセルフ・プロデュースに挑戦した本作の魅力と、音楽的ルーツまでを、じっくりたっぷり紐解きます。巻末の読者プレゼント情報もお見逃しなく。

text:藤井美保 photo:川田洋司
森 恵3 枚目のフル・アルバム『1985』。聴き終えたときの感覚が何かに似ていると思った。そう、それは、戸棚の奥のコンデンスミルクを親に隠れてこっそり舐めたときの多幸感。それくらい「いいの?」という近さとオープンさで森 恵の人柄が濃厚に音から伝わってくる。手にしたのは、悩み藻掻きながらも進めという勇ましい思いと、誰かを照らす光になりたいという静かな気持ち。楽曲、歌詞、サウンド、そして表情豊かな歌声とが一体となって、実に生きいきとした心象風景を見せてくれる1枚だ。満を持してのセルフ・プロデュースで誕生したこの新たな森 恵を、じっくりたっぷり語ってもらった。

森 恵 / ニューアルバム「1985」より”確信犯”ミュージッククリップ(ショートバージョン)

--- 『10年後この木の下で』から4年ぶりのフル・アルバムということなので、まず、どんな思いで臨んだかをうかがわせてください。

森 今回は、「こういうコンセプトで、こういう曲があって」というのが最初からガッツリあったわけではないんです。それより、「とにかくいい曲を作ろう。自分が歌いたい曲をハッキリとサウンドにも打ち出していこう」という気持ちが強かった。なので、大人のみなさんにわがままを言って、そういうものができるのを待っていただきました(笑)。音作り の面で大きかったのは、いつものツアー・メンバーとレコーディングしたこと。「後にライブをやるんだったら、こういう音にしたい」ということも盛り込んで、徐々に徐々に形にしていったという感じです。
--- クリエイティブな気持ちはずっと持続してましたか?

森 そうですね。とにかく、前回出した作品を自分で越えていかないきゃという気持ちが強かったんです。昔を引き継ぐというより、新しい森 恵が生まれたと言える作品にしたかったので、いろんなことに積極的にチャレンジしつつ曲作りをしていました。セルフ・プロデュースだったので、そのへんはかなり自由(笑)。そもそもアレンジ自体を自分で手がけることもライブ以外では初めてでしたしね。ドラムを打ち込んだり、ベースを自分で弾いたりしてデモを作ってました。
--- デモはやっぱりご自分で作ってたんですね。

森 はい。メンバーに世界観を伝えるため、ある程度完成のイメージに近いものを作っておきたかったんです。それこそベースを買いに行くところからのスタートだったりして。

--- そうなんですか!

森 ベースは初心者だったので、店員さんに「どうやって弾くんですか?」と聞くところから始まりました(笑)。そうやって今までにやったことのないことをやることで、音楽を見る角度や捉え方が変わってきたところもありましたね。
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--- タイトルの『1985』は、森さんの誕生年からきてるそうですね。今、ベースを買ったというお話を聞いて、音楽への初期衝動を見つめ直すといった原点回帰の意味も込められているのかなと思ったのですが。

森 音楽に対するアプローチとしての原点回帰はあったかもしれないんですけど、音的に昔の延長線上ではまったく意味がないと思ってたんですね。だから、「この作品で新しい自分を生み出すんだ」という意欲を込めて、自分の誕生年をタイトルにしました。楽曲のテイストに、80年代の要素を取り入れてるところもありますしね。あの時代に生まれた自分が、当時のよさを今のサウンドとして表現したいという想いも合わさってるんです。
--- さて、森さんにお会いするのはこれが初めてなので、ここでちょっと時間を巻き戻させてください。音楽を始めた頃に夢中になっていたアーティストや曲はありますか?

森 今でこそ私はギターを弾いてライブを中心に回ってますが、昔はギターを弾いてない人も好きでした。学生時代に好きだったのは、ピアノ弾き語りの柴田淳さん。柴田さんが自由に歌ってる姿を見て、「ああ、音楽で生きていくのも素敵だな」と将来の道を意識したりしましたね。両親が音楽好きだったことももちろん影響してると思います。家ではクラプトンやB・B・キングなど洋楽のレコードがいつも回っていたので、知らずしらずたくさんの音楽に触れてたはずですし、家にはピアノもあって、幼い頃は習ってもいました。そういう環境下で、自然と音楽とのつきあいが始まったのかなと。
--- ギターを始めたのはいくつのときですか?

森 15歳ぐらいかな。祖父が趣味でギターをいっぱい持ってたので、興味が出始めたときに「1本ちょうだい」と(笑)。

--- アコースティック・ギターですか?

森 はい。昔からアコギばっかりで、ホントについ最近、エレキも本腰を入れて弾き始めたという感じです。
--- 曲を書きたいという衝動みたいなものが湧いたのは?

森 初めて曲を作ったのは18、19歳ぐらいのとき。ただそのときは、「とにかく歌いたい」だったんです。そうやって作って、歌う回数が増えていくうちに、「自分の思いを、自分の言葉と自分のメロディで届けたい」という気持ちがどんどん強くなって、20歳ぐらいから曲作りが加速していきました。
--- 詞と曲は同時発生的ですか?

森 昔は同時発生のほうが多かったですね。最近はエレキとかベースも弾くので、ベースのフレーズからできたり、エレキを弾くうちに浮かんだリフをメロディに置き換えたりといった作り方もしてます。
--- そうやって更新してきたものが溜まって、今回の新たな森さんにつながっていったわけですね。セルフ・プロデュースを望んだのは?

森 ライブのたびに、「ファンの方と盛り上がるためにはこうしたほうがいいんじゃないか」などとメンバーとやりとりして、音楽の方向性を作っていく楽しさを実感してたんですね。なので、そのスタイルでアルバムに取り組んでも面白いんじゃないかと思い、今回はそれを最後まで貫かせてもらいました。
--- 先ほどデモの話が出ましたが、そのデモをメンバーに「こんな感じです」と聴かせるところからレコーディングが始まるわけですよね。

森 レコーディング前のプリプロで、けっこうじっくりと音合わせをしました。「もうちょっとこういうテイストにしたいんだけど」、「もっといいフレーズあるかな?」、「これを軸に自由に弾いてみてくれる?」などと言って、メンバーからもアイディアをもらって作っていったんです。私ひとりじゃできなかったことが、ホントにたくさん詰まってます。
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