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2018年5月2日 更新

誠実な歌声と包容力あふれるギタープレイに背中を押された夜。ポルノグラフィティ15thライヴサーキット“BUTTERFLY EFFECT” レポート

ポルノグラフィティの全国ホールツアー15thライヴサーキット“BUTTERFLY EFFECT”が2018年4月29日の神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール公演で千秋楽を迎えた。ここではツアーの折返し地点・2018年2月1日に開催された東京・NHKホール公演の模様をお届けする。

text:藤井美保 photo:三吉ツカサ
 開演前、観客がまだ席を探してざわついているうちから、前方のスクリーンには幻燈のように仄暗く飛行機の映像が流れていた。しばらくすると暗闇の中、ライト・カーテンの帯だけがゆっくりと回りだす。ここ数年のポルノグラフィティのアリーナツアーやスタジアムライブでは、客入れ時間に観客をビジョンに映して、そのライブごとのキャラクターと文字でイジるといったポップな会場の温め方が定番になっていたから、この、むしろ温めないというムードに胸が高鳴った。オリジナル・アルバムを引っ提げてのツアーへの意欲が伝わり、こちらもビシッと背筋を伸ばして聴き手スイッチをオンにした。
 ほぼ時間ピッタリにスクリーンにツアー・タイトルが現れると、ワーッと一瞬拍手が起こる。が、バーチャルなふたりが現れ、時空を超えるように歩き出すと、観客は水を打ったように映像に見入った。いつしか画面のふたりは、今、この瞬間、ステージに降り立ったというように並んで歩みを止めた。その像とピタッと重なったのは、紗幕の後ろに立つリアルな岡野と新藤のシルエット。驚きとため息と叫びが入り混じるものすごい歓声が沸き上がる。その歓声さえシュッと吸い取ってしまうように、紗幕越しのまま珠玉のミディアム・スロー「夜間飛行」が始まった。息を飲むようにその美しさに聴き入る観客。曲が終わると同時に湧き起こったのは、静かだが熱のこもった長い拍手だった。なんとも言えない抑えがたい感動がゾワゾワと押し寄せた。
 その静謐な空気を一気に打ち破ったのは「Montage」だった。紗幕が上がって現れた実物のふたりに、観客は堰を切ったように熱狂。ポルノグラフィティの代名詞であるメランコリックなラテンビートの迫力に酔った。有無を言わさず「真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ」で、ダークでハードな世界へと聴き手を引きずり込んでいくふたり。歌も演奏も映像もライティングも、すべてが有機的に結びついていてスタイリッシュだ。心底カッコいいポルノグラフィティを凝縮した3曲。終わった途端、「スゲーッ!」、「カッコいい!」という歓喜のさざめきがしばらく鳴り止まなかった。長年見てきているが、会場のこんなストレートな興奮を見るのは初めて。求める者と求められる者とのベクトルが完全に合致した素晴らしいオープニングだった。
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 昨年11月からスタートした39本に及ぶポルノグラフィティ“15thライヴサーキット"BUTTERFLY EFFECT"”。その折り返し地点となった2月1日、NHKホール2デイズの2日目は、磨き抜かれた本物の輝きに終始衝撃を受ける一夜となった。
 「ワシらがポルノグラフィティじゃ!」という定番の挨拶から入った最初のMCでは、まず岡野が「2日目ええ感じで圧がきとる。みんなからの圧があればあるほどええライブになるけ」と観客に賛辞を送った。「やっぱり東京の都会的なバイブスが俺を奮い立たせるのかな。イケてるライブ、最後までやっていこうぜ。チェケラ!」と新藤が照れつつおどけると、「東京だから浮かれてる」とすかさずツッコむ岡野。
 ここでツアー・メンバーとして新しく加わったギターのtasukuを紹介すると、「せっかくだから18年の歴史を感じてもらえるライブにもしたい」と、「ワールド☆サタデーグラフティ」からは懐かしいナンバーを4曲繰り出した。岡野もいれてギター3本で奏でた「ダリア」は、ゴリゴリのロック感満載。新藤とtasukuのツインギター・ソロがすごく新鮮だった。ノンストップで「ネオメロドラマティック」、「メリッサ」。「アポロ」とか「サウダージ」ではない中間管理職的な選曲も心憎い。それでもこのブロックが終わったときは、あのヒット曲が聴けた! という新たな歓喜のさざめきがしばし鳴り止まなかった。
 ここで新藤が『BUTTERFLY EFFECT』について語り出す。「サブスクにいけば何十万曲という名曲があるなか、新曲を作るのにどんな意味があるんだコノヤローと、締め切り間際思ったりする(笑)」と創作者としての苦悩も吐露しつつ、「それでも、音楽が大きな海だとして、自分たちの1曲が一粒の雨としていつか川となり海に注ぎ、それがまた雨雲を作って雨を降らすと思いたい」と新藤。そういった思いを、蝶のひと羽ばたきが地球の裏側で嵐を起こすという「バタフライ効果」に託したのだという解説に、「話してくれてありがとう」に近い「ウォーッ!」という声が上がった。みんなただ闇雲に騒ぎたくてここに来てるわけじゃない。深いところでの日々の格闘を、こんなふうに時折真剣に話してくれるポルノグラフィティが好きでたまらないのだ。
 「Working men blues」は、まさに「バタフライ効果」の信念を歌った曲に思えて胸を打たれた。不穏なSEからのアジテーション・ロック「170828-29」では、閃光のようなライトがミサイルを彷彿とさせる。かと思えば、新藤が脚本、演出、撮影を手がけたコミカルなショートムービーを導入部にした「君の愛読書がケルアックだった件」、そして「クリスマスのHide & Seek」と、『BUTTERFLY EFFECT』のなかでもとびきりのせつない系が二連発。どのタイプの曲にもキャリアを積んでこその振り切った味があって聴き応え満点だ。
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 中盤、ふと見れば、アコギを抱えた岡野がひとりステージに座っていた。「ちょっとしゃべろうと思うんじゃが」と始まったのは、高校生の頃から長いことやってきた歌の話。「正直あぐらをかいてた時期もあった」と告白しながら、4年ほど前に一念発起して初めてボイス・トレーニングを受けたことなど、歌を巡る心境の変化を丁寧に語っていく。傑作だったのが、昨年のAmuse FesでPerfumeの「ポリリズム」を歌ったときのエピソードだ。さかんにワイドショーで取り上げられたその映像を見た仲良しの先輩・スガシカオさんが、「あれはヒドい。<ポリリズム>は青筋立てて歌う歌じゃないよ」と連絡してきたのだという。というわけで、「一歩引いた歌い方をそろそろ」と弾き語りで「カゲボウシ」を披露。15周年の頃、「歌とギターと向き合うという意味でいつか弾き語りに挑戦したい」と話していたことを思い出し、こういう気取らないカタチでそれを実現した岡野が実にらしいと思った。
 続いてスクリーンには「午前5時に反転したものは」というキーワードが現れ、そこから派生するイメージとともに今度は新藤がステージを独占し、「インプロ」で静かなる激情を封じ込めるようにイマジネーション全開のギターをかき鳴らし始めた。そのサウンドはやがてトリッキーなリズムへと変貌していき、気づけば「月飼い」に。さらにノンストップで、「Part time love affair」。もともとR&B的雰囲気を持つ曲だが、岡野がおもむろに奏で始めたブルースハープで、さらにグッと大人モードになっていく。
 圧巻だったのは、そこからなだれこんだ「Fade away」だ。哀愁系AORと洪水系ロックが合体したような魅惑的なこのナンバーは、この日いちばんのディープな世界。観客は手を振ることも揺れることも忘れて、凍りついたようにただただ呆然とその世界に浸り、聴き入った。「何が正しい? 見えない未来」と咆哮する歌声と、その切羽詰まった思いにシンクロするむせび泣くようなギター。間違いなくこのライブのヘソといえる時間だった。
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